踏切って、一旦停止しなくていい?


ドイツと日本、2カ国の間で驚くほど違う、『えっ?そうなの?』の数々を一つ一つご紹介していきます


遮断機が下りている踏切へ着くと、ドイツ人はエンジンを切って燃料を節約する
遮断機が下りている踏切へ着くと、ドイツ人はエンジンを切って燃料を節約する

 ドイツへ行き、日本との違いに驚いた交通ルールの一つに、「踏切の渡り方」があります。ドイツでは踏切が開いているとき(遮断機が上がっていて、警報機が鳴っていなくて、赤いライトも点滅していない)、車はそのまま走行できます。止まらずに。徐行の必要さえありません。踏切のある道路は30 km/hから50 km/hですが、そのスピードを保ったまま踏切を通過します。

 

 はっきり言って、最初はその行為(止まらずに通過)が怖くて仕方ありませんでした。何故なら、自殺行為に思えるからです。日本で車を運転していたときは、いつも一旦停止して左右を確認していたのですから、仕方ありません。左右も見ずに踏切を通過するのは、本当に列車が来ないものか?心配でたまりませんでした。

 ドイツの踏切初心者のころは、徐行する必要がないことはわかっているものの、やはり少しブレーキを踏んで若干スピードを落として踏切内へ入り、左右を見ながら通過していました。

 遮断機は上がっているし、警報機も鳴っていないし、赤いライトも点滅していないので、列車が来ていないことは論理的には理解できるものの、実際に自分が通過するとき丁度タイミング良く(?悪く)列車が踏切へ差し掛かり、自分の車とぶつかるのではないか?ドキドキしました。

 


本当に行っちゃっていいの?


 しかし何度か通るうちに、ドイツ式の交通ルールにも慣れ、徐行することもなく左右を確認することもなく、踏切を通過できるようになりました。そしてその行動に慣れてしまうと、踏切通過が楽になりました。こうなると、いちいち線路の手前で一旦停止していたことが、何と無駄なことをしていたのだろうと、まったく逆に思えてくるから人間とは不思議なものです。

 正直今(2015年に帰国後)、日本の踏切で毎回一旦停止しなければならないことが、苦痛でなりません。もしどこかで踏切で一旦停止することなく、法定速度のまま踏切を通過する車両を見かけたら、それは私の車かも知れません。

 

 ちなみに、ドイツでは踏切で列車の通過を待っている間、すべての車がエンジンを切ります。節約家のドイツ人は、無駄にガソリンや軽油を使いたくないと思っているからです。最近では、co2の排出削減に気を使っているのかも知れません。また、信号ストップで車自身がエンジンを切るものもありますので、ともかく列車が通り過ぎるまで、例えたくさんの車が列を作って並んでいたとしても、踏切の周りは至って静かです。

日本の踏切では、必ず一旦停止が交通規則。「ドイツでは止まらなくてもいい」って言われても、結構怖い
日本の踏切では、必ず一旦停止が交通規則。「ドイツでは止まらなくてもいい」って言われても、結構怖い

つい、うっかり右側を走って………


 ご存知の通り、ドイツでは車両は右側通行です。踏切の潔い(?)渡り方もそうでしたが、片側通行のサイドが左から右に変わることも、最初は何とも気持ち悪い感じが否めませんでしたが、これも次第に慣れます。人間とは何と順応力の高い動物なのでしょうか。

 

 ここだけの話ですが、16年間ドイツに住んでいた間に、私は何度か一時帰国をしています。その帰国した際に車を運転して、あろうことか右側通行を、そう50 mくらいしたことがあります。駐車場を出て右へ曲がり、そのまま右側通行をしてしまいました。当然対向車がやって来るのですが、まずバイクが来ました。道路の右端をこちらに向かって走って来ています。私は『何逆走してんだよ、こいつ』と思いながら、ぶつからないように通り過ぎようとした瞬間、そのバイクの後方に2台の車が見えました。『えっ、車まで逆走してんの?』と思った瞬間、『いけね。やっちまった。俺が逆走してんだ』とやっと気付きました。

 

 ちなみにこのとき、バイクの後ろの車は止まり、その後ろから来ていた車は前を行く車が止まったため、それを追い越そうかと少しセンターラインへ差し掛かったときに私の車を発見したらしく、1台目の車の後ろへと戻り停車、そしてすぐにバックで下り始めました。追突の際に、事故に巻き込まれるのを避けようとしたのでしょう。

 逆走に気付いた私は、本来の左車線へと車線変更(?)を行い、バイクと2台の車に頭を丁寧に下げて謝りながら横を通過しました。兎にも角にも事故を起こすことなく、また誘発することもなく、居合わせた皆さんが無事であったことが不幸中の幸いでした。

信号が青になって「進め」となる直前、何か日本と違うことが起きるドイツの信号機
信号が青になって「進め」となる直前、何か日本と違うことが起きるドイツの信号機

あれっ?ドイツの信号、機壊れてる?


 最後に、交差点などに設置されている信号機の違いについてお話ししましょう。写真を見てもらえば一目瞭然、日本が横なのに対して、ドイツは縦に信号を並べています。

 しかしながらもう一つ、ドイツの信号機には不思議な違いが潜んでいます。ドイツで自分で車を運転したことのある人であれば、いくつか交差点ストップで赤信号で止まり、それから青信号で走り出すのを何回か繰り返すと『あれ?』と違和感を覚えたことがあるのではないでしょうか。

 

 微妙な違いなので、ここから少しだけ気を付けて読んでください。信号が赤に変わるときの変わり方は、日本もドイツも同じで青→黄色→赤と変わり、黄色を見たら止まるように心がけ、赤に変わったら交差点内へ侵入してはならず停止線で止まります。

 日本とドイツの違いは、この後起こります。信号が青に変わるときの変わり方は、日本では赤→青ですが、ドイツでは赤→黄色→青なのです。そう、赤から青へ変わるとき、間に黄色が入ります。黄色は「もうすぐ青になるから準備してね」という意味合いのようです。進むなら一斉に、一気に走り出そうとする。あるいは、やるときはやる、やらないときはやらない(休む)、こういったところにも日本人との違いがあり、ドイツ人の気質の一端が垣間見えるような気がします。