くしゃみへの対応


ドイツと日本、2カ国の間で驚くほど違う、『えっ?そうなの?』の数々を一つ一つご紹介していきます



「Gesundheit!(お大事に!)」


 周りに居る人がくしゃみをしたとき、ドイツでは「Gesundheit!(ゲズントハイトゥ!)」と声を掛けます。ドイツ語のGesundheitはこの場合「お大事に」という意味ですが、元々の意味は健康、健全です。

 くしゃみをした人は、声を掛けてくれた人へ向かって「Danke!(ありがとう!)」と返します。

 

 通常は家族や会社の同僚など、顔見知りの間で声を掛け合いますが、たまにあるのが、例えば列車でたまたま向かい合わせに座った者同士でも、この優しい言葉を掛けてくれるドイツ人がほんたまーに居合わせたりします。

 まったく面識がないにもかかわらず、「お大事に!」だなんて他人へ言うのも、きっと結構勇気が必要だっただろうと思うと、意外だった分も含めて妙に嬉しくなるものです。

ドイツでは、人前で鼻をかむことはまったく構わないこと、なのです
ドイツでは、人前で鼻をかむことはまったく構わないこと、なのです

人前でも鼻水をかむのはOK!


 くしゃみに関連する事柄として、鼻水をかむことがあります。日本では人前で鼻をかむのはよくないこととされていて、極力避けます。「どうしても」という緊急事態であれば、一緒に居る人(たち)から体の向きを変えて、「すみません」などと言いながら他人から見えないようにして行いますね。

 

 しかし、ドイツでは「出物腫れ物所構わず」なのか?、人前で鼻をかむのは一向に構わないこととされています。一番驚くのは、食事中でもそのまま(横へ向き直ったりもせずに)普通に鼻をかみます。ドイツ人にとっては、よくないものを体の中に持ち続けていることの方が悪いことと考えているようで、日本の風習とは逆に鼻をすすってはいけないのです。

 

 ある日私がミュンヘンの語学学校へ向かう列車の中、読んでいたドイツ語の文法の本がとてつもなくわかりやすく文法について書かれていて、読みながら『なるほど、そういうことか!』と感心しながら読み進んでいました。そのとき鼻水が分泌されてきて、少しすすっていました。にもかかわらず、文法の謎が嘘のように解けていた瞬間だったので、鼻もかまずに読んでいました。

 『もうダメだ!』と思い、ポケットに手を伸ばしてポケットティッシュをつかんだとき、目の前に座っていた(ドイツ人)女性が「使って」と言いながら、彼女のポケットティッシュを私へ差し出してくれました。

 

 びっくりしました。私の左手はもう自分のポケットティッシュをポケットの中で握っていましたが、彼女が差し出してくれたティッシュから一枚だけ取り出し、残りを返しました。すぐに鼻水を処理しましたが、このとき『「ドイツでは鼻をすすってはいけない」って本当なんだ。今周りに居る人たちは『早く、鼻をかめ!』と、みんな思ってたんだな』と思いました。

 それ以来、ドイツで人前では鼻水をすすらないことにしました。その対策として、常にポケットティッシュを持ち歩くことにしました。


飛行機の機内はドイツ?日本?


 ドイツに住んでいた頃、何度も日本へ一時帰国しました。あるとき飛行機の機内食を食べ始めたときに鼻水が出てきたため、ポケットティッシュを取り出し、鼻をかみました。
 すると6列くらい(かなり離れている)前の通路側に座っていた日本人女性が飛び上がって、一旦こちらを睨んで怒っていました。おそらく食事中に私が鼻をかんだことが、心底許せなかったのでしょう。食事中のマナー違反として。

 

 私はつい(数時間前まで)ドイツに居たときの習性で、食事中に何の躊躇もなく鼻をかみました。前方の女性が席から飛び上がったので、『ああ、そうか。日本では御法度の行為だったな』と思い出したくらいです。『やってしまったことは、仕方ない』とも思いましたし、また『それにしても飛び上がって、後ろを睨むほどのことなのだろうか?』とも思いました。

 なぜならドイツでは当たり前の行動だからです。自分はそのときもう10年以上ドイツで暮らしていましたので、半分ドイツ人になっていたと思います。『飛行機の機内には多くの日本人も居たことから、静かに鼻をかむべきだった。後ろを睨んだ女性には、食事中に嫌な思いをさせてしまい申し訳なかった』と今は思います。

 でもその当時は、『ドイツじゃ許されることだ。知らないあんたの方が悪い』と考えていました。

 

勇気を出して「Gesundheit!(ゲズントハイトゥ!)」と声を掛けてみれば、きっとこんな笑顔が返ってきます
勇気を出して「Gesundheit!(ゲズントハイトゥ!)」と声を掛けてみれば、きっとこんな笑顔が返ってきます

 くしゃみに関しても、鼻水をかむことに関しても、日本とドイツとでは違った考え方が存在し、違った慣習があります。

 これを読んでくれた皆様には、ぜひドイツ語圏へ行った際、偶然にも周囲でくしゃみをした人と居合わせたら、勇気を出して「Gesundheit!(ゲズントハイトゥ!)」と声を掛けてみてもらいたいと思います。きっと一瞬にしてその場一帯がが和むことを、異国の地で体験することができます。ぜひお試しください。なにせ無料ですから、お試しあれ。