店主 坂本健二のドイツでの挑戦の記録 16年間の軌跡を時系列に沿って紐解いていく
ダイビングヘッド 鮮やかなゴール
坂本は所属するTSVイッフェルドルフの2軍チームの試合に出場していた(上の資料を参照)。ホーム(TSVイッフェルドルフ)の1軍チームはピッチが試合前日までに降った雨の影響でゆるく、状態が良くないことから例外的に先に試合を行い、DJKヴァルトラムの1軍に対し3対0と快勝。シャワーを浴びた後勝利の美酒に酔い、みんなビールグラスを片手に2軍同士の試合を高台から観ていた。
TSVイッフェルドルフの2軍チームが後半、左サイドを破りセンタリングに成功する。そのことを察知し、ボランチの位置からペナルティエリアまで侵入していた坂本へボールは渡る。ボールの高さは胸くらいで、坂本の走り込んだポジションより若干前だった。流れのままに、坂本はダイビングヘッドを試み、ヘディングしたボールは相手GKの右側を抜き、見事ゴールネットを揺らした。
丁度TSVイッフェルドルフの1軍の選手たちが固まっているサイドにあるゴールでの得点。2軍の試合で、こんなにも盛り上がるか、というくらいホームチームを応援している観戦者から歓喜の声が上がった。
試合自体は3対5で敗戦したものの、酔っ払いと化したホームの1軍選手たちが並ぶ土手へ、試合を終えた2軍チームが集結。1軍と2軍一緒に、みんなで雄叫びをあげた。
ほとんどの試合でボランチとして起用された坂本だが、1シーズンこのTSVイッフェルドルフの2軍とO32の試合へ出場し、合わせて6得点を記録した。後から思えばこの日のゴールが、坂本がドイツで挙げたゴールの中で一番印象深いものであった。試合後監督からは「Du bist Kopfballmonster!(お前はヘディングの怪物だ!)」と坂本は言われた。
このシーズン98/99の中で、TSVイッフェルドルフで300試合に出場したとして表彰される選手を、坂本は身近で目にする。1軍チームは10部リーグ(この地域では12部リーグまで存在)でプレーしており、決して高いレベルでの記録ではないが、間違いなく彼は村のヒーローであると坂本は感じた。
いよいよ?もう?渡独後5カ月で参加した第1回指導者講習会
さて話を坂本自身のサッカーについてから、このドイツへのサッカー留学の1番の目玉である「指導者資格B級ライセンス(現在のC級)の取得」へ移そう。
B級ライセンスの資格取得プロセスは、合格までに1週間の講習会へ3回の参加が必要で、3度目の講習会の後半が試験となる。3回の講習会へいつ参加するか?は、各参加者が自由に選択できるが、最初の講習会参加から最後の試験を伴った講習会まで、最長でも2年間のうちに終結させなければならない。
初めての指導者講習会 リラックスし過ぎ?
「俺はバイエルン人だ!」
さて、そんなことよりも気になるのが講習会における肝心の講義と実技での様子、坂本のドイツへ来て5カ月ちょっとのドイツ語は果たして通じたのか?
結果はNoだった。実技は他の参加者の真似をすれば何とかなるため問題はなかったが、講義はほとんど理解できなかった。
毎週木曜日のケーニッヒさんの授業では問題がないものの、本物の講習会ではやはり坂本のドイツ語はまだ十分ではなかった。1回目の講習会では試験は一切ないため、坂本はただただ講習会のリズム(毎日、講義3回と実技2回)とその独特な雰囲気に慣れることにのみ重きを置くこととした。
講習会の2日目の実技を終え人工芝のグラウンドから宿舎へ歩いて戻る途中、講師から「君は何かわからないことがあったら、すぐに自分へ聞くようにしなさい」と声をかけてもらった。
というのもその実技の中で、おそらく講師は日本からも参加者が居ることを参加者全員に周知させたかっただけの質問だったが、坂本は意味を取り違えて大声で答えてしまった。
「俺は、バイエルン人だ」と。 つづく
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